からだの中の細胞の働き

 私たちの肉体は60兆個もの細胞で構成されていると言われています。それは私たちの頭では想像できないくらい膨大な量になりますが、考えた見ますと元々は受精卵というたった一つの細胞でした。
その一つだった細胞が分裂を果てしなく繰り返し、やがて現在の肉体のすべてになっています。

 一般的な認識では、60兆個という果てしない数の細胞でできている肉体は“細胞が集合したものである”と考えるかもしれません。ところが、それでは肉体の本質を知ることはできないと思います。そうではなく、私たちのからだは、一つの細胞が60兆個に分かれたものであり、そして一つ一つの細胞が肉体の中でそれぞれの役割を演じていると考えるのが良いと思います。
 そう考えれば、手にケガをすると足に不調が及んだり、ギックリ腰になると全身が動けなくなったりすることが理解しやすくなります。そしてギックリ腰の直し方も容易に理解できるようになります。

 さて、そういうことで今回は、私たちのからだの最小単位である細胞について整体療法に役立つであろうことだけに絞って簡単に取り上げてみます。
 細胞についての詳細は、それぞれに学んでいただければと思います。

細胞は知性に満ちている

 私たち人類の歴史は、長くても1000万年くらいだと言われています。一方、生命(細胞)の歴史は38億年、比べものにならないばかりか、生命全体で見ますと人類出現はごく最近の出来事です。
 細胞は地球のあらゆる出来事を乗り越えて今日まで生き延びています。その細胞が私たちの肉体の基盤です。細胞の一つ一つはとても小さいものですが、その中には地球環境を生き抜く経験と知性が満ちています。このことを私たちはいつの時も忘れることなく謙虚でいる必要があります。
 「自分の思い込みよりも、細胞が出す反応の方が正しい」といつも考えるべきだと思います。何故なら、私たちの科学は人体について解らないことがまだまだたくさんあるからです。生命の神秘に対して謙虚であり続けていただきたいと思います。

ミトコンドリア(細胞小器官の一つ)

 ミトコンドリアは核を持っている真核細胞に共通してみられます。
 生きるために必要なエネルギーをつくる呼吸の場であり、酸素を利用してエネルギーをつくっています。独自のDNAを持ち、独自の増殖を行います。(核と同調しない)

代謝

代謝:同化と異化

 「新陳代謝」「基礎代謝」という言葉は、美容関係やダイエット関係で頻繁に使われます。
 正確な意味を知らずに使っている人がほとんどだと思いますが、専門家としては正確な意味を知っておく必要があります。細胞内における化学変化を代謝と呼び、同化反応と異化反応があります。

 同化反応では、太陽光や光エネルギーがATPに変換され、光合成に必要なエネルギーとなります。植物は大気中のCO2や地中からの無機物などから光合成によって有機物を生み出します。そしてその有機物は私たちの食物となります。
 異化反応(私たちの細胞が行っている)では、化学反応によって放出されたエネルギーがATPに変換され、筋肉の収縮に必要なエネルギー源となり、発熱のためのエネルギー源となります。

異化:酸素を利用しての呼吸

 私たちが行っている外呼吸は肺で酸素を血液中に入れ、血液中の二酸化炭素を外に排出することです。その目的は細胞で呼吸を行うためであり、酸素を利用して発熱や筋肉収縮のためのエネルギーを得るためです。

 ③の水素と酸素が合成して水ができる反応では大きなエネルギーが放出されます。
 私たちのからだの中で多くのエネルギーを必要とするのは骨格筋と脳です。ですから、私たちがからだを動かし、思考を巡らせるためには、糖質(グルコース)と水と酸素を補給し続けなければならいという理屈になります。
 私たちが食べる食物の栄養(炭水化物・タンパク質・脂質など)はからだを新陳代謝して維持するための物質と、エネルギーを得るための物質です。そして私たちが呼吸によって取り入れる酸素はエネルギーを得るためのものであるという認識をしっかり持ちましょう。

細胞膜

 細胞の表面は細胞膜で覆われていますが、それは内外が水に馴染みやすい性質を持った油性の膜です。
 上図のように水を弾く疎水性の脂肪酸の膜を中心部に、表層は親水性のリン酸になる構造をしていますので、細胞内の水分を弾くこともなく、さらに細胞外の水分を弾くこともないのに、細胞の内外をしっかり隔てることができます。
 この構造は私たちの皮膚に共通しています。私たちの皮膚も皮脂膜という脂の膜で覆われていますので、水を使っても、お風呂に入っても皮膚が溶けてしまうことはありません。皮脂膜の下には角層があり、セラミドなど、水に馴染みやすいが水を通さない脂質(細胞間脂質)があって体外からの侵入物を阻止しています。細胞膜も私たちの皮膚も同じような仕組みで内部を守っていることに注目してください。


 自分がどのようなセラピストを目指すかによっても違いますが、向上心のある人の場合、技術力が向上するに従って、からだの細かいことにまで想いが及ぶようになると思います。そして、技術的に越えなければ壁が次から次に現れると思います。
 そして、そんな時には「細胞レベル」へと思考が向かっていきます。

 ・ミトコンドリアの存在意義とは何なのか?
 ・元気な細胞(からだ)とはどういう状態であり、病的な細胞とはどういう状態なのか?
 ・細胞の中での化学変化に貢献する酵素はどうなればよく働くようになるのか? ‥‥

 ですから、細胞について、本質的な部分はしっかり頭に入れておくが大切になります。

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