顔面を上げる施術での確認ポイント

 多くの人の顔(顔面)は下がっています。具体的には前頭骨、鼻骨、頬骨、上顎骨が下がり、後頭骨が上がった状態になっています。尚、下顎骨は顔が下がっている状態とは関係なく下がっている場合が多く見受けられます。

 「どうして顔面が下がるのか?」と考えると、
 (1)下方(胴体の方)の筋膜が顔を引き下げている可能性
 (2)後頭骨が上がっているために前頭骨が下がり顔面が下がっている可能性
 (3)上部頚椎との関係で顔面骨が下がっている可能性
 (4)表情筋やそしゃく筋の変調が顔を下げている可能性

 以上の4つが確認事項として浮かんできます。
 ですから施術に際しては、この4つの観点を1つも漏らすことなく確認して修正する必要があります。
 ここでは、これらのポイントについて概略を説明します。

(1)下方の筋膜が顔面を下方に引っ張っている可能性

 まず、皮下筋膜は「全身を覆うシートのようにつながっているものである」と認識する必要があります。(実際に皮下筋膜を操作してそのことを確認してください。)
 例えば鎖骨が下がれば胸鎖乳突筋や僧帽筋上部線維もこわばりますが、鎖骨と下顎との間の筋膜が緊張しますが、それによって下顎骨が下がり、顔面が下がるという状況になります。

 ケースとしては3つくらいがあります。

①胸骨上の筋膜がこわばっている場合

 内側広筋―腹直筋の中央ライン―胸骨上筋膜―胸骨舌骨筋という連動関係があり、このライン上がこわばった状態になっていますとオトガイ~鼻骨など顔面の中央ラインが下方に引っ張られ下がります。ですから、よく観察しますと顔面の外側面はそうでもないが中央部が下がった顔になっていることが解ります。
 解決策は内側広筋~胸骨舌骨筋などの中心ラインのこわばりを解消することです。また恥骨の状態はこのラインに関係しますし、大いに関連する内側広筋のこわばりを確実に解消できる技術力を身につける必要があります。

②腹直筋・腹斜筋のこわばりや上腕の捻れなどが関係している場合

 ①の中央ラインの外側になりますが、大腿直筋と連動する腹直筋部分、外腹斜筋、内腹斜筋がこわばって胸郭を引き下げ、それによって頚部の筋膜がこわばって顔面を下げている場合があります。
 下半身からの影響においては長母趾屈筋―大腿直筋―腹直筋、前脛骨筋―外側広筋―外腹斜筋、母趾外転筋―後脛骨筋―長内転筋―内側広筋という筋連動によって胸郭が歪み、それが顔につながる筋膜に影響して顔面を下げる場合があります。あるいは、これらの筋連動とは関係なく、骨盤の歪み、その他の理由によって下半身から続く筋膜が捻れ胸郭を介して顔面の筋膜に影響を及ぼす可能性もあります。

③上肢からの影響で顔面が歪んだり下がったりする場合

 上肢から影響においては、橈側手根屈筋―上腕二頭筋長頭―三角筋前部線維、尺側手根屈筋―上腕二頭筋短頭―大胸筋鎖骨部、腕橈骨筋―上腕三頭筋外側頭―前鋸筋、その他の筋連動によって鎖骨や胸郭が歪んで顔面の筋膜に影響を及ぼすことがあります。
 また肘関節はねじれやすく、その影響で上腕筋、回外筋、腕橈骨筋等々上腕の筋肉が変調したり、上腕の筋膜が捻れたりして鎖骨や胸郭や歪め、その影響が顔面に及ぶ場合もあります。
 さらに、私たち日々たくさん使っている手指の筋肉の変調が影響して上腕の筋肉をこわばらせたり、上腕及び前腕の筋膜を捻れさせ、それが影響を及ぼしている場合もあります。ですから、手指と手関節を整える手段は必要になります。

(2)後頭骨が上がっているために前頭骨が下がり顔面が下がっている場合

 頭蓋骨がもつ特性の一つとして、前頭骨と後頭骨がシーソーのような関係になっていることがあります。つまり後頭骨が下がると前頭骨が上がり、後頭骨が上がると前頭骨が下がるという仕組みになっています。(例外もあります)
 ですから、顔面の下がりを修正するためには後頭骨が上がった状態を改善しなければなりません。後頭骨の状態は筋肉との関係では、頚椎からつながっている後頭下筋群、肩甲骨からつながっている僧帽筋上部線維、鎖骨からつながっている胸鎖乳突筋、その他脊柱起立筋の延長としての性質をもつ頭板状筋や最長筋などの変調が影響しますので確認して調整する必要があります。
 また、隠れた要素として頭長筋の影響力も強いと言えます。頭長筋はうなずく動作で働く筋肉であると解釈できますが、ノートパソコンなどのデスクワーク、スマホを見る時間が長いなどの要因でこわばる可能性が高いので今日では、こわばっている人が大変多いと言えます。頚長筋も含めて椎前筋の変調は後頭骨の状態に影響を与えると考えることができますし、次の項目である頚椎の状態にも深く関係しますので、椎前筋を調整する施術ができる技術力が必要になります。

(3)上部頚椎との関係で顔面骨が下がっている可能性

 施術の実際面では、第2頚椎と顔の状態は密接に関係していると言うことができます。第1頚椎を直接触れることは難しいのでこのように表現しましたが、実際には第1、第2頚椎、つまり上部頚椎と顔の状態は密接な関係があると言えます。
 第2頚椎の棘突起が大きく突出していると感じる場合、それは多くの場合、第2頚椎が下向きの状態になっているということですが、この状況では顔面は下がります。手動で上向きになって突出している棘突起を下に下げて第2頚椎の下向きを修正しますと顔面はあがります。そして、このときの顔の動きは上がっている後頭骨を下げて前頭骨や鼻骨が上がる様相とは少し違い、顔の中(篩骨や上顎骨)も動くように感じられます。
 これは見かけ上で顔面が上がること以上に、機能的にも良い結果をもたらすと考えることが出来ます。ですから顔面に対する施術においては、上部頚椎を整えることは「芯から上げる」という意味でとても重要なことになります。

 下向きになっている上部頚椎を調整する方法はいくつかありますが、どの方法が良いかはその時の状態によって異なります。
 頭長筋や頚長筋をゆるめて後頭骨と環椎との関係を調整することで上部頚椎が変化することもあります。
 あるいは、胸鎖乳突筋、僧帽筋、脊柱起立筋(板状筋など)を整えて後頭骨を下げることによって後頭下筋群が第2頚椎の棘突起を引っ張らない状態にすることで変化することもあります。
 また、上部頚椎につながっている肩甲挙筋、中斜角筋の状態を改善することで変化することもあります。
 さらに、第1胸椎、第2胸椎が上向きの状態になっているとき上部頚椎が下向きになり、斜角筋がこわばるということもおきますので、胸椎の状態を改善することで変化する場合もあります。
(こちらを参照)

(4)表情筋やそしゃく筋の変調が顔を下げている場合

 表情筋とそしゃく筋は脳神経によって働いていますので脳神経の働きが悪ければ、表情筋がたるみ、そしゃく筋も間延びした状態になって顔面が下がる要素になります。骨格だけでなく頬の筋肉もたるみますので、顎ラインがぼやけたり、ほうれい線が目立つような状態になります。
 さらに脳神経は胸鎖乳突筋と僧帽筋の働きにも関係していますので、胸鎖乳突筋がゆるんで鎖骨や胸骨が下がり、僧帽筋がゆるんで肩甲骨(および鎖骨)が下がって、それ故に顔面を下に下げてしまうことが起こります。これが表情筋とそしゃく筋に対する第1の観点です。

 表情筋の中で、頬骨につながっている小頬骨筋、上唇挙筋、上唇鼻翼筋はこわばりやすい筋肉です。私たちは日常的に言葉を発したり、食物をそしゃくしたり、何かを凝視したりしていますが、それによってこれらの筋肉はこわばり、そしてそれが蓄積して硬くなります。これら表情筋のこわばりは頬骨を下方に引き下げ、それにともなて眼窩、前頭骨が下がります。瞼の開閉動作に不十分さを感じるようになりますが、同時に顔面も下がります。ですから、顔面の施術においてはこの部分の表情筋は持続的指圧によってゆるめる必要があります。

 また、口角を下げる働きをする口角下制筋、下唇下制筋、オトガイ筋などのこわばりは、下顎を下げてしまいます。顔に対する施術では、これらの筋肉も調整する必要があります。

舌と顔面

 上記4つの項目で施術をおこない顔面の下がりを調整したとしても、舌が下がった状態になっていますともう一つスッキリとした感じになりません。
 舌の状態は外側から観察することはできませんが、舌がしっかりと上にある人は喉~下顎にかけてがスッキリした感じなりますし、舌が下がっている人の場合は喉(甲状軟骨)から舌骨にかけての部分が腫れぼったい感じになっています。
 ですから、顔面を上げる施術においては、舌の状態を整える施術も必要になりますが、それについては改めて取り上げます。 

 

  
 
 

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